プロジェクトマネージャーの成長を支える羅針盤──PMCDとは何か?
はじめに現在、車載システム/ソフトウェア開発の複雑な事業環境において、プロジェクトマネージャー(PM)の役割はますます重要になっています。しかし、優れたPMになるために必要なスキルや知識とは、果たして何なのでしょうか?必要な知識をまとめたものとしてはPMBOK® が有名ですが、求められるスキルや育成については明確な定義がありません。そこで登場するのが「PMCD(Project Manager Competency Development Framework)」です。 PMCDの位置づけと背景PMCDは、PMI(Project Management Institute)によって開発されたフレームワークであり、プロジェクトマネージャーに求められる「能力」を体系的に整理したものです。単なる技術的なスキルセットではなく、「知識(Knowledge)」「パフォーマンス(Performance)」「個人特性(Personal Competencies)」の3側面から成り立っており、総合的なコンピテンシーを育成・評価することを目的としています。3つの柱:PMCDのコンピテンシー構造 知識(Knowledge):PMBOK® Guideをベースにしたプロジェクトマネジメント知識体系。プロセスやツール、手法の理解がここに含まれます。 パフォーマンス(Performance):知識を現場でどう活かすか。実際のプロジェクトで成果を出せるかが問われます。 個人特性(Personal Competencies):コミュニケーション能力、リーダーシップ、倫理観など、人物としての資質に関する領域です。この三位一体のアプローチは、単なる資格取得以上に、実務家としての進化に焦点を当てているのが特徴です。さらに、このコンピテンシー構造は、業界や組織が持つ固有のパフォーマンス要件によって、補完&拡張されること許容しています。それぞれのコンピテンスの程度は、コンピテンス指標によって5段階のレベルが定義されています。 3つの柱の内部構造知識のコンピテンスPMP試験や同等の資格認定に合格することで立証されるものとしており、PMCDの定義外ですが、PMに求められる知識を「人」「プロセス」「ビジネス環境」に分類しています。 実践のコンピテンスマネージャーが、プロジェクトマネジメント知識と個人のスキルによって、実施できるまたは達成できていることを評価する領域です。PMBOK® 第3版の知識エリアに基づいて、コンピテンス要素を定義しているだけでなく、パフォーマンス基準と証拠資料を使って、コンピテンス要素を評価する仕組みを提供しています。 個人特性のコンピテンスマネジメントする各プロジェクトメンバの能力に貢献する、振る舞い・態度・文化的な影響およびコアとなるパーソナリティ特性を定義しています。マネージャーは、他者と効果的なやりとりができるスキルをもつことは重要であるため、6つのコンピテンスユニット「コミュニケーション力」「リーダシップ力」「マネジメント力」「認識力」「実効力」「プロフェッショリズム」を定義しています。さらに、実践コンピテンスと同様に、コンピテンス要素を定義しているだけでなく、パフォーマンス基準と証拠資料を使って、コンピテンス要素を評価する仕組みを提供しています。 なぜPMCDが今、注目されるのか?変化の激しい時代において、プロジェクトマネジメントはもはや「計画を守る」だけでは不十分です。ステークホルダーの多様化やアジャイル型の開発環境では、「状況に応じて適応できる力」がPMに求められます。PMCDは、そうした多様な能力を総合的に見える化し、継続的な能力開発のガイドラインを提供する点で、非常に有効です。 ビジネスガレージが提供するPMスキル可視化サービスビジネスガレージでは、組織が求めるPMを育成するご支援の一環として、PMCDや他のフレームワークも活用した、皆さんの組織の特徴や文化に適合したPMスキル可視化をご支援しております。プロジェクト特性や組織特性を考慮して、「会社が期待するプロジェクトマネージャ像」を、お客様と一緒に作り上げます。弊社の熟練専門家が、ドキュメントやヒアリングを通じて、組織の特徴を整理するだけでなく、プロジェクトマネージャへの期待を明文化し、期待するプロジェクトマネージャが保有すべきスキルを言語化します。 既成のフレームワークに囚われない、実用的なスキル定義をご提供しておりますので、興味のある方は是非お問い合わせください。 さいごに自己評価と育成の道しるべとしてPMCDは評価のための“物差し”であると同時に、成長のための“地図”でもあります。自らの強みや課題を客観的に把握し、戦略的にキャリアを築いていくうえで、非常に有用なツールといえるでしょう。 内山哲三