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プロセスモデリング ~ プロセス文書化のテクニック

前回のコラム(プロセスとは何か?)では、開発プロセスについて考察し、プロセスを文書化する際のヒントと注意点についてお伝えしました。今回は、プロセスを文書化する際のモデリングのテクニックについてご説明いたします。 プロセス文書は、どのような用途で使われるのか?簡単に言うと、プロセスは2種類の使われ方に分類されます。 「組織標準プロセス」として全プロジェクトがプロセスを使う場合 このケースでは、扱う製品や開発ライフサイクルの異なるプロジェクトが、標準プロセスを自分のプロジェクト用にテーラリングして使用することになります このため、プロセスは各プロジェクトの用途に合わせた柔軟な選択や、つなぎ合わせが可能な形式で表現することがポイントです プロセスはフォーマルな形式で文書化される必要があり、Automotive SPICE 能力レベル3で求められるプロセス状態にもっともフィットした形式と言えます 「プロジェクト内のルール」として同じプロジェクト内でプロセスを使う場合 このケースは、同じプロジェクト内の業務フローや作業手順をプロジェクト内で共有する使い方です このプロセスを他のプロジェクトが使用することはありませんので、プロジェクトの中で自由な方法で文書化すればよく、形式的な制約もありません プロセスモデリングの考え方ここでは、フォーマルな形式でプロセスを文書化していく場合に有効な「プロセスモデリング」の考え方をご紹介します。 プロセスは、3つのレベルを用いて定義すると、プロセスの組み換えや、その後発生する改善が容易にできるとされています。すなわち、次のような3階層に分けることを念頭にプロセスの各要素を定義していくことが推奨されます。 抽象的なレイヤープロセスモデリングでは、Universal Process Modelと表現され、上位レベルの概要を提供し、方針を具体的に表現するレイヤーです。例えば、「すべての作業はベースラインに統合される前にインスペクションを受けること」のように、基本方針を定義することになります。 現実的なレイヤープロセスモデリングでは、Worldly Process Modelと表現され、上位レベルの方針を実現するための手順を確立するレイヤーです。具体的には、作業者の作業順序をガイドし、作業に必要な条件と結果を定義し、詳細な手順や成果物のテンプレートなどは、適宜下位レイヤーの文書を参照することになります。例えば、「いつ、だれが、どのようにSQA監査を実施する」のような作業レベルの手順を定義することになります。 詳細なレイヤープロセスモデリングでは、Atomic Process Modelと表現され、極めて詳細な手順を確立するレイヤーです。成果物を作成する手順やテンプレートなどが該当します。例えば、「アーキテクチャ設計の設計技法」、「アーキテクチャ設計書テンプレート」などを定義することになります。 プロセスアーキテクチャ設計の事例 プロセスモデリングの考え方を参考に作成したプロセスアーキテクチャ設計の事例をご紹介いたします。  本事例では、4階層のプロセスアーキテクチャを設計しましたが、手順はおおむね次の通りです: プロセスの階層を決定する 各階層で作成するプロセス文書を決定する プロセス文書のフォーマットを決定する プロセス文書を作成する 作成したライフサイクルにプロセス部品を当てはめプロセスを作成するここで注意していただきたいのは、プロセスアーキテクチャはプロセスの静的な構造であるということです。プロセスの動的な側面では、ここで作成したプロセス文書(アクティビティ、タスク、プロセス資産など)をプロセス部品として捉え、プロセスは部品を連結して作成するという前提に立っているということです。この考え方は、いわゆるオブジェクト指向のアプローチを踏襲しています。OMG(Object Management Gruop)から、SEPM(Software and System Process Engineering Metamodel)が発行されているので、興味のある方は参照してみてください。  さいごに:Automotive SPICE 能力レベル2のプロセス文書今回は、Automotive SPICE 能力レベル3で必要となるフォーマルな形式による組織標準プロセスの作成に焦点をあてて説明してきました。最後に、Automotive SPICE 能力レベル2で求められるプロセス文章の形式について簡単に触れておきます。能力レベル2の要点は、計画的に作業を進めることです。作業の計画を立てるには、何らかのプロセス文書は必要でしょう。しかしながら、今回説明したような部品を結合してプロセスを作成するようなことは求めていません。どのような形式であろうと、作業ルールがプロジェクト内に周知できるレベルの文書があれば問題ありません。最初から難しいレベルを求めず、まずは必要最低限のルールを決めて、計画的な作業ができる環境を整えてください。(日吉 昭彦)

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アセスメントを活かす!改善を定着させる4つのポイント

皆様の中には、Automotive SPICEなどのモデルに基づいたアセスメントをした、もしくは受審した経験のある方が多くいらっしゃるかと思います。では、そもそも何のためにアセスメントをするのでしょうか?レベル獲得をアピールするためでしょうか?商権獲得の条件になっているからでしょうか?確かにそういった事情もありますが、その事情に固執しすぎるとその一瞬のためだけにプロセスを整備する、いわば一過性の取り組みになってしまう場合があります。そこで今回は、アセスメントの本来の目的とアセスメントの有効な活用事例についてご紹介したいと思いますので、ご一読ください。 ■ アセスメントの本来の目的とは?Automotive SPICEやCMMI等のモデルに基づくアセスメントは、プロジェクトの現状を客観的に可視化し、次の改善につなげるための有効的な手段です。しかし、現場ではアセスメントが“イベント化”してしまい、評定や弱点ばかりに注目される傾向が見受けられます。その結果、アセスメントが一過性の取り組みとなってしまい、継続的な改善につながらないケースが多くなっています。皆様の現場では、アセスメントが継続的な改善に活用されていますでしょうか?様々な組織でお話を伺う中で、特に国内では”アセスメントのイベント化”の傾向が強いように感じています。 ■ 目標達成がゴールになってしまう落とし穴アセスメントの目的が「能力レベルの獲得」にすり替わると、達成した時点で改善活動が止まってしまいます。このような状況下ではプロセスの更新が行われず、最悪の場合、改善前の状態に戻ってしまうこともあります。数年前のことになりますが、私が過去にプロセス改善を支援した開発現場へ何年かぶりに訪れた際、そこで見たものは、以前定義したはずのプロセスが改善前の状態に戻っており、時間をかけて築いてきたプロセス資産や知見の多くが失われていた姿でした。その時は大きな虚無感と同時に、あるべき姿を”維持”できなければ意味がない、と感じた瞬間でもありました。そういった意味でも、アセスメントという、いわば「プロセス診断」を継続的に実施し、常に改善を前に進める取り組みが必要だと改めて感じています。 ■ アセスメントによる改善を定着させる4つのポイントここからは、アセスメントによる改善の機会を自組織に根付かせるための4つのポイントをご紹介します:① まずは小さく始めてみる 10数プロセスを一度のアセスメントで実施する必要はありません。 主要なプロセスや、その中の一部のベースプラクティス(BP)に絞って実施し、小刻みに改善を繰り返す方法も効果があります。② 現場と一体で進める 開発・QA・マネジメント層が一体となって推進することで、組織全体の意識を高めることができます。 改善活動の体制を構築する際には、影響力のある人材の選任が重要です。③ 質の高いフィードバック アセスメントによって問題の本質となる指摘・弱みを抽出することで、改善の方向性を明確にすることができます。 よってアセッサーは、関係者全員が改善の方向性に納得できるよう、根拠のあるフィードバックをする必要があります。④ 成果の可視化 コスト削減、納期短縮、品質向上など、改善によって得られた成果をプロジェクトや管理者層が実感できるようにします。 成果の大小にかかわらず、改善結果を共有することが重要です。このような取り組みを通じて、アセスメントは組織にとっての“生活必需品”となり、日常的な改善活動の一部として定着していきます。 ■ 私たちが支援できること改善が停滞する主な原因として、以下の2点が挙げられます。  改善の目的が「レベル獲得」へとすり替わってしまうこと 現場にとって改善の効果が実感しづらいこと こうした状況を打開するためには、まず「アセスメント」という手法を活用し、問題の本質を客観的に可視化することが重要です。質の高いアセスメントは、課題の核心を捉え、改善の方向性を明確にする力を持っています。さらに、アセスメントを一部の専門家だけの取り組みに留めるのではなく、開発・QA・マネジメント層が一体となって継続的に推進することで、その効果を最大限に引き出すことができます。 私たちは、以下のような支援を通じて、高品質なアセスメントの定着と改善活動の加速に向けたサポートをしています: 組織にメリットのあるアセスメントが提供できる、社内アセッサーの育成 アセスメントとプロジェクトが共存・共栄する仕組みづくり SEPG(Software Engineering Process Group)と連携したプロセス改善支援 アセスメントでプロセスを最速改善したい、改善を組織に根付かせたい、という思いのある方は、ぜひ弊社コンサルタントへお気軽にご相談ください。 こちらの関連記事もぜひご覧ください。[コラム]Automotive SPICEを使って業務は改善されているのか?https://www.bgarage.co.jp/news/1240/ [コラム]Automotive SPICEの活動を効率良く進めるためにhttps://www.bgarage.co.jp/news/1031/ (長澤克仁)

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B'zine - 2025年8月号(Webinar開催:SPICE で読み解くモデリング&シミュレーションの品質基準など)を発行しました

今夏は異例の猛暑日や渇水が続いたと思えば、日本各地で集中豪雨や洪水による大規模災害も併発しました。夏季休暇で心身共にリフレッシュできたでしょうか? B'zine 8月号を発行いたしました。動画版(約3分)も公開していますので、弊社公式YouTubeより是非ご視聴ください。https://youtu.be/LH-sSwVuOFA     B'zineは、1回/月のペースでの配信しています。ご興味のある方は、ここから登録をお願いいたします。   B'zineビジネスガレージ通信(2025年8月号) B'zine 8月号をお届けします。今夏は異例の猛暑日や渇水が続いたと思えば、日本各地で集中豪雨や洪水による大規模災害も併発しました。夏季休暇で心身共にリフレッシュできたでしょうか?  【今月のトピックス】 イベント:9月24日開催Webinar: SPICE で読み解くモデリング&シミュレーションの品質基準 動画公開:7月Webinar(Automotive SPICE/機能安全/サイバーセキュリティを両立する設計アプローチと事例紹介)の動画を公開しました コラム:プロセスとは何か? ~ 開発プロセスについて考えてみよう コラム:要求仕様に関する不具合発生を防止する -「W字モデル」導入のメリットと課題 導入事例:生成AIを活用した、技術コンサルティングの導入事例を追加しました 【イベント】 9月24日Webinar開催~SPICE で読み解くモデリング&シミュレーションの品質基準~のご案内Intacsから2024年11月にドラフトとして公開された「Modeling & Simulation SPICE」の内容をご紹介します。2025/09/24 WED午後16:00 – 午後17:00 (JST)参加ご希望の方は、こちらからお申込みください→https://www.bgarage.co.jp/news/1336/ 11月Webinar(予定):~ 生成AIでFMEA作成してみたら ~生成AI(ChatGPT)を活用することで、FMEAの作成期間とリソースを劇的に削減した事例をご紹介します。 【動画公開】 7月に開催したWebinar(Automotive SPICE/機能安全/サイバーセキュリティを両立する設計アプローチと事例紹介)の動画を公開しました動画は弊社公式YouTubeチャンネルからご視聴いただけます:→https://www.youtube.com/watch?v=tD3GhK7PWrA【コラム】 プロセスとは何か?~ 開発プロセスについて考えてみよう皆さんは、「プロセス」という言葉の意味を、うまく説明できますか?筆者は、当初なかなかうまく説明できませんでした。プロセスという単語は、そもそもカタカナで記載される単語であり、日本語の解釈が数多くある言葉だと思います。従って開発プロセスとして使う場合は、プロセスという言葉の使用環境を理解して、その解釈の適合性を整理しておくことが、スタートラインだと考えています。今回は、「プロセス」という言葉との向き合い方について、そのヒントをお伝えします 。詳細はこちら→https://www.bgarage.co.jp/news/1223/  要求仕様に関する不具合発生を防止する -「W字モデル」導入のメリットと課題「出荷直前/出荷後に要求仕様通りにソフトウェアが動作しないことが発覚し、その改修作業で想定外の手戻り作業による大幅な出荷遅延と追加費用が発生した。」ソフトウェア開発プロジェクトで上記のようなトラブルを経験したことはありませんか?一般的に、要求仕様に関連する不具合は、最終工程であるソフトウェア検証まで検出できないため、手戻り作業や改修コストが予想以上に大きくなります。要求仕様に関する不具合発生の防止策の一つとして、上流工程の品質向上を目的とした「W字モデル」の考え方とプロセスを導入するというアプローチをご紹介します。詳細はこちら→https://www.bgarage.co.jp/news/1309/ 【導入事例】  生成AIを活用した、技術コンサルティングの導入事例お客様より『過剰に工数がかかり過ぎないFMEA作成手順を検討したい』とご相談をいただきました。生成AI(ChatGPT)を活用することでFMEA作成をどれほど効率化できるかを検証した、その実施内容と効果をまとめたものを掲載しています。詳細はこちら→https://www.bgarage.co.jp/case/1286/

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要求仕様に関する不具合発生を防止する - 「W字モデル」導入のメリットと課題

はじめに「出荷直前/出荷後に要求仕様通りにソフトウェアが動作しないことが発覚し、その改修作業で想定外の手戻り作業による大幅な出荷遅延と追加費用が発生した。」ソフトウェア開発プロジェクトで上記のようなトラブルを経験したことはありませんか?一般的に、要求仕様に関連する不具合は、最終工程であるソフトウェア検証まで検出できないため、手戻り作業や改修コストが予想以上に大きくなります。要求仕様に関する不具合の原因として、以下のようなケースが考えられます。 要求分析工程で、開発者が誤った(曖昧な/不十分な)要求仕様書を作成してしまった。 検証者は、検証工程で誤った(曖昧な/不十分な)要求仕様書に従って検証仕様書を作成して検証を実施したため、検証検証結果の妥当性の確認が不十分だった。 開発者と検証者間の情報共有不足により、検証工程で検証者が要求仕様書を十分に理解できないまま、誤った検証仕様書を作成して検証作業を実施したため、十分な検証ができていなかった。要求仕様に関する不具合発生の防止策の一つとして、上流工程の品質向上を目的とした「W字モデル」の考え方とプロセスを導入するというアプローチがあります。 1. 「V字モデル」とはまず最初に、ソフトウェア開発で広く採用されている「V字モデル」について簡単に説明します。 ウォーターフォール開発モデルでは、各開発プロセスの上流から下流に向かって、要求分析、設計、検証と各プロセスを進め、基本的に後戻りはしません。 V字モデルは、ウォーターフォールモデルに対して、開発工程と検証工程の各プロセス間の対応関係を明確にした開発モデルです。一般的に、V字モデルにおける開発者と検証者の業務分担は以下となります。   2. 「W字モデル」とは次に、「W字モデル」について、「V字モデル」との違いに着目して簡単に説明します。 W字モデルは Andreas Spillner 氏が提唱した「上流工程で検証計画を同時期に作成することで、開発工程全体短縮(開発効率化)を実現する」 というプロセスモデルに基づいており、開発と検証を交互に繰り返す活動が 「W字」 に見えることから、W字モデルと呼ばれています。 W字モデルはV字モデルを拡張した開発モデルで、開発工程完了後に検証を行うのではなく、開発と検証をリンクさせ、開発段階から検証者が参加して検証準備を同時並行で行うことを特徴としています。W字モデルにおける開発者と検証者の業務分担は以下となります。   3.開発者、検証者の業務分担2章、3章で説明した「V字モデル」と「W字モデル」の違いを、各工程毎の開発者と検証者間の業務分担と実施時期に着目して表形式でまとめてみましたので、参考にしてください。   4.「W字モデル」導入のメリット「W字モデル」を導入することにより、開発作業と検証作業を並行して実施することで、次のような効果が期待できます。 要求仕様書や設計書を開発者と検証者が合同レビューすることで検証の知見が加わり、矛盾/欠陥の検出率向上します(作業成果物の品質の向上)。 早期検出と検証の知見を開発にフィードバックできるため、検証工程まで不具合を流出させた場合の改修費用との比較で、手戻り工数の大幅な削減が期待できます(開発効率化)。 開発/検証チーム間の協業体制が醸成され、プロジェクトメンバーの品質に対する意識が向上します。 5.「W字モデル」導入の留意点「W字モデル」を導入するにあたり、次のような考慮・認識しておくべき留意点があります。 W字モデルを導入するには、検証工程を前倒しにするなど開発プロセス全体に変革が必要で、体制構築と要員計画の見直し、チームのスキルセット向上等、多岐にわたる事前準備が必要となります。 W字モデルでは開発作業と検証作業の連携が密になり、リソース調達やプロジェクト管理が複雑になるので、開発者と検証者間の情報共有の仕組み構築や開発/検証ツール選定も相互連携を考慮して慎重に行う必要があります。 一般に高スキル者数は限られており、開発/検証チーム双方に高スキル者を同時にアサインすることは困難です。 開発段階から検証者が関与するためには、検証者にも開発者と同等レベルの仕様理解力、設計力、コミュニケーション能力が求められますが、プロジェクト管理者は開発チームへの高スキル者アサインを優先すると、開発/検証チーム間の対等な関係構築は困難になります。 W字モデル導入の効果を得るには、組織の開発プロセス(V字プロセス)が十分成熟していることが前提となります。 検証者が検証業務の分析/計画などの活動無しに検証作業を実施している組織では、Wモデル導入効果は期待できません。特にソフトウェア愛初経験豊富な検証者を確保できるかというところがネックとなりがちですので、上記の留意点を踏まえると本格的に「W字モデル」を導入するのは、少しハードルが高いと感じるかもしれません。ソフトウェアアーキテクチャ/詳細設計の設計レビューに、ソフトウェア開発経験が無い検証者が参加しても、お勉強会になりがちですが(勉強の成果は、自ら実施する検証作業の精度向上には役立ちます)、レビュー対象のドキュメントの品質向上効果はあまり期待できません。要求分析工程に限定すれば、評価者に追加要求されるスキルは仕様理解力となり(仕様理解力は文章読解力と同じ)、ソフトウェア設計経験の有無にはあまり関係ないと考えて良いので、「W 字モデル」のアプローチ導入に対するハードルは大幅に低下するのではないでしょうか。 まとめユーザ視点・仕様理解力を持った検証の専門家が要求仕様レビューに参加すれば、検証の知見を発揮して要求仕様の品質向上に大きく貢献できると思います。要求仕様に関する不具合は影響範囲・規模が一番大きいので、これを少しでも削減できれば大きな開発効率化が実現できます。まずは、要求分析工程に対して部分的に「Wモデル」を適用するというスモールスタートをトライしてみてはいかがでしょう。(海農公宏)

お知らせ

生成AIを活用した、技術コンサルティングの導入事例を追加しました

生成AIを活用した設計ドキュメント作成プロセス効率化支援の導入事例お客様より『過剰に工数がかかり過ぎないFMEA作成手順を検討したい』とご相談をいただきました。当社は生成AI(ChatGPT)を活用することでFMEA作成をどれほど効率化できるかを検証しました。今回はその実施内容と効果をまとめたものを掲載しています。少しでもご興味のある方は、是非ご覧ください。生成AIを活用した設計ドキュメント作成プロセス効率化支援

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プロセスとは何か? ~ 開発プロセスについて考えてみよう

この記事を見てくださっている方は、製品の開発プロセス作成に何らかの形で携わっている方だと思います。今回は、「プロセス」という言葉との向き合い方について、そのヒントをお伝えします。  Process という言葉の解釈皆さんは、「プロセス」という言葉の意味を、うまく説明できますか?筆者は、当初なかなかうまく説明できませんでした。プロセスという単語は、そもそもカタカナで記載される単語であり、日本語の解釈が数多くある言葉だと思います。従って開発プロセスとして使う場合は、プロセスという言葉の使用環境を理解して、その解釈の適合性を整理しておくことが、スタートラインだと考えています。 まず、Google 先生に「プロセス」「広辞苑」と入力して聞いてみたところ、下記の回答が返ってきました: 広辞苑における「プロセス」の意味は、「過程」や「工程」と同義で、物事が結果に達するまでの道筋や手順、方法を指します。ビジネスシーンにおいては、業務の進め方や手順、または一連の出来事を指すことが多いです。 広辞苑には「プロセス」という単語そのものの定義は直接記載されていませんが、類語として「過程」、「工程」、「手順」などが挙げられています。これらの言葉は、広辞苑で「プロセス」の概念を理解する上で参考になります。 AIによる概要として、英語の「process」が語源であり、現代では物事の達成までの工程や過程、あるいはその進め方を指す言葉として一般的に使用されています。という説明も出力されました。次に日本語辞書から検索してみると(デジタル大辞泉で検索): 仕事を進める方法、手順。「作業のプロセス」 過程、経過 コンピューターでプログラムなどを動作させる際、CPUが実行するひとまとまりの処理の単位 他の検索ツールにおいても、おおむね同様の説明が得られるようです。結論からすると、外来語である「プロセス」を直接当てはめる日本語はなく、使用用途に応じて適切な解釈をすることの重要性が再認識されます。 では、「開発プロセス」として見た場合、どのように解釈するのが良いでしょうか?ここでは、欧米が発信する世界標準や文献から、Process の一般的な定義を調査してみます。 IEEE Standard Glossary of Software Engineering Terminology:ある目的のために実行される一連のステップCMMI 用語集:互いに関連を持った活動の集合であり、所与の目的を達成するために、入力を出力に変換するものQuality Process Management by Pall, Gabriel:指定された最終結果を生み出すように設計された作業活動に関わる「人、材料、エネルギー、機器および手順」の論理的編成 つまり、開発プロセスとは、「アウトプットを出すために実施している作業ステップ」と考えられます。 プロセスアセスメントのインタビューで、プロセスという言葉を使って会話すると、「残念ながら、私たちにはプロセスはないんですよ」というやり取りになることがあります。プロセスの意味を正しく理解していれば、少しおかしな発言だと思いませんか?言葉の解釈が正しくできていれば、「私たちの作業プロセスは文書化されていません」という回答となるはずです。何らかの作業をしてアウトプットが生成されていれば、そこに「プロセス」は存在するからです。  開発プロセスを文書化する際のヒントと注意点それでは、開発プロセスを文書化する上で重要な点について考察してみます。 現状の作業方法を正しく理解すること これには、「誰が」、「何を入力として」、「どのような方法で」、「何を作成しているか」を含みます そして明確になったことを文書化することこれを第一ステップとして、開発メンバー全員で共有することが重要です。もし、個々人で作業内容が異なる場合は、調整しながら納得のいく手順に修正する必要があります。このステップなくして、プロセス改善 = 「品質や生産性の向上」にはつながりません。 特に、プロセスアセスメントモデルを活用しているケースでは、次のようなことが起こりがちですので注意が必要です: 従来の作業方法を考えずに、モデルをそのままコピーしてプロセスを作成してしまう アセスメントで「○○文書がない」と指摘されたため、モデルに定義されている成果物をそのまま新たに導入してしまう製品開発ができている限り、アセスメントモデルが言及していることと同様の作業や成果物が必ずあるはずです。言葉遣いの相違、成果物の過不足あるいは作業順の違いなどはあって当たり前です。アセスメントモデルは、世の中のベストプラクティスをモデル化しただけですので、順番や言葉遣いは標準化されているからです。 ここで重要なことは: モデルの意図を理解すること 自分たちが従来実施している作業手順を尊重すること もしモデルが言及していることと現作業手順にギャップがある場合、それを変更・追加した際の価値と効果を評価することアセスメントモデルがプロセス能力レベルを定義していることから、ゴールを急ぐことが目的になり、ついつい本質を見失う活動になりがちです。ばくだいな工数をかけてプロセスを変更したにもかかわらず、工数ばかりが増加して誰からも歓迎されない手順になってしまったり、アセスメントの説明以外では誰も使っていない成果物ができてしまうということが実際に起こっています。まずは、自分たちの作業を尊重して作業を進めることを第一ステップとしてください。  プロセスは、段階的に改善していく「現状手順をベースに作業すると、すぐに能力ベルが上がらないじゃないか!」、「上司からは、顧客要求だから1年後に能力レベル3が必達だ!と言われている」という声が聞こえてきそうです。それは、確かにリアルワールドで起こっていることだと認識しています。目標到達までの時間は、現状いる位置により異なりますよね。従って、まずは自分のいる位置をきちんと把握した上で、議論することが必要です。 Automotive SPICEを要求してくる欧州自動車メーカーも、プロセスに関するプロフェッショナルです。発注前のアセスメント結果(サプライヤーの現状の立ち位置)があまりにも低い場合は、無理な要求はしないはずです。それは能力レベルを1段階向上させるために要する時間を経験上知っているからです。言葉を変えると、そのような評価になったサプライヤーには発注しないはずです。ノミネーションに残ったということは、それなりの期間で能力レベルの向上が可能だと判断したということなのです。 現状の立ち位置から目標到達までの改善計画を立案し、自動車メーカー(あるいは会社の上司)と合意しながら進めていくことが最短の道のりとなるはずです。ぜひ、従来の作業方法に自信を持って、アセスメントモデルに翻弄されない活動をしていただけるよう切に願います。 プロセスの可視化のステップのわかりやすい事例が、CMMI関連の技術文書に書かれているので、プロセス能力の向上という観点からプロセスの可視化のイメージをつかんでください。  能力レベルとは、作業(プロセス)の定着度合いを示す指標だと考えてみてください。プロジェクトの経験から得た学びを、継続的に改善を繰り返すことで段階的にプロセス能力の向上が可能となります。この過程では、「プロセスが適切な粒度で可視化」されるようになることで、その粒度でプロセス実績が計測可能となり、結果としてプロセス実績のばらつきが少なくなっていくことになります。  「文書化されたプロセスが使われない」もう1つの要因作成者が苦労して作成したプロセスも、開発メンバーに使ってもらえなければ、まったく意味がありません。残念ながら、数多くの組織やプロジェクトで、このような状況が起きています。もう一度「プロセスの可視性」と「予測される実績」の図を見てください。プロセスが可視化されていても、開発メンバーに浸透していなければ「能力レベル1」の状態と変わりません。たとえプロセスが文書化されていても、そのプロセスを意識せずに各メンバーが思い思いの方法で作業しているのであれば、プロセスは雲の中にある状態と変わらず、実績もついてこないことは容易に想像できると思います。 なぜこんなことが起こってしまうのでしょうか?誰が考えても、この無駄な状況を理解できると思います。ズバリ!日本の文化では、「Process」の必要性を多くの人が感じていないのだと思います。特に、人と人との擦り合わせの中で業務をしていく習慣が強い日本では、その場その場で臨機応変な対応を迫られます。ここが、外来語である「プロセス」の難しいところだと思っています。たとえプロセスを文書化しても、プロセス通りには作業できないことが日常で多く起こってしまうのかもしれません。あるいは作業計画を作成したが、要件変更が日常的に発生し、計画しても意味がないということが日本では多いようです。 一方、日本でも擦り合わせだけではうまくプロジェクトを回せない状況になりつつあります。例えば、Z世代のような若い人たちの考え方の変化、海外を含めた多拠点開発や分業制の必要性など、開発プロジェクトの環境は欧米に近づいてきています。従って、このままの状況を放置していくことは良いことではありません。  では、「プロセス」にはどのように向き合っていけばよいのでしょうか?第一に、プロセスを確立することの目的を明確にし、その価値を共有することです。 プロセス管理の前提は、製品品質や生産性の向上が直接的な焦点ですが、最終ゴールは事業への貢献にあります 従って、プロセスは経営者や上級管理者の事業への思いを実現する手段でなければなりません 欧州自動車メーカーは、Automotive SPICEをプロジェクト要求としてインプットしてきますが、彼らがアセスメントモデルを活用する背景には、プロセス管理の前提を理解した経営層が組織運営しているサプライヤーと幅広く長期間の取引をしたいという目的もあるのです 次に、目的を達成するためのアプローチを経営側面で決定し、段階的に進めながら最終ゴールを目指すことです。 初めから高望みははしない アセスメントモデルで使用される各能力レベルへの到達指標は、その評点に大きな幅(50点から85点)があることを認識してください 最初の目標は50点で良しとし、次の段階で85点以上を目指すようなアプローチが可能になっています はじめから重厚長大なプロセスを作っても、使われなくなるという副作用が増すだけです 能力レベルの評点に大きな幅を持たせているのは、プロセス改善で起こりうる状況を考慮した上で、段階的なアプローチを可能にするためなのです  プロジェクト個別に進めるのか、最初から組織標準を導入するのか? Automotive SPICEのようなプロセスモデルの本質を理解して、アプローチを決定することが良いでしょう アセスメントモデルでは、組織標準の適用段階は能力レベル3であるということを理解しておくことも重要です 経験則的に、プロジェクト内の決め事が徹底できない状況のプロジェクトに、組織標準を適用し浸透させることは至難の業です プロセスの作成に専任リソースを準備するのか、プロジェクトメンバー全員が参加する方法(プロジェクト業務との兼務)で実施するのか? ここには正解はなく、経営者や管理者の思いで体制を構築することが最善策となるでしょう  たとえば下記の2つの考え方は、人によって異なるはずです: 兼務の場合、プロジェクト業務がひっ迫するとプロセス改善活動がおろそかになるため、専任リソースによる活動が望ましい 専任リソースがプロセスを定義すると、プロジェクトの思いとは異なるプロセスができやすく、浸透しにくいため、全員参加が望ましい ここで重要なのは体制ではなく、経営者・管理者が自分の思いで活動を主導することであり、これができる組織は必ず成功しています 最終的なゴールを最初からある程度想定しながら、段階的にゴールを変更していくことも重要かもしれません。筆者は、これまでの経験(自社や他社の取り組み)から、最終ゴールは、「ツール上で日々の仕事ができるようになれば、担当者はプロセス文書を見なくても仕事ができる状態にすること」だと考えています プロジェクト計画書の作成を例に挙げると: 日本では、計画書のテンプレートを準備して、人手により時間をかけて書いていることが大半です 欧米では、日々の作業に必要なWBSタスクや役割分担などをツール上で管理者が定義し、担当者はWBSに従って作業し、実績を入力する方法が一般的です これは、ツール上にある各タスクが日々の作業計画であり、作業記録が進捗状態だという合理的な考え方です プロジェクト計画書を他者に見せる必要がある場合は、「計画書作成ボタン」を押すと、ツール上に組み込まれたテンプレートに必要なデータ要素が組み込まれ、自動で印刷されるような仕組みが導入されています欧米のケースでも、プロセス文書は存在しており、それはツールの設計図という位置づけに加えて、各ツールの機能画面から必要に応じて簡単に参照できるようになっています  さいごに筆者は、全社にCMMIに準拠した標準プロセスを導入するように命じられた時、欧米人を1名プロジェクトに加えてくれとお願いしました。なぜならば、カタカナで分かりにくい内容のものを導入するなら、文化的に「Process」という扱いに慣れた人材の投入が最短だと思ったからです。残念ながら願いは叶わず、プロセス能力が上がるまでに長い時間がかかってしまいました。しかしながら、長い年月をかけて数多くの挫折を経験できたことで、開発現場におけるプロセスとの向き合い方に関するノウハウを得られたことは貴重な体験でした。今回のコラムが、同様の悩みを持たれている方々への一助になれば幸いです。 弊社では、プロセスアセスメントモデルを扱う際に発生する課題や教訓を記載したコラム(Automotive SPICE(アセスメントモデル)の功罪)も発行しておりますので、こちらもご参照ください。 次回は、プロセスを文書化していく際に有効な「プロセスモデリングの原則」を取り入れたプロセスアーキテクチャに関するコラムをお届けする予定です。(日吉昭彦)

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【Webinar動画公開】第4回 Automotive SPICE/機能安全/サイバーセキュリティを両立する設計アプローチと事例紹介

先日開催した、第4回 Automotive SPICE/機能安全/サイバーセキュリティを両立する設計アプローチと事例紹介の Webinar動画を、弊社公式 YouTube に公開しましたのでお知らせいたします。ぜひ、ご視聴ください。 ▼ご視聴はこちらから:https://youtu.be/tD3GhK7PWrA▼タイムライン 00:00 オープニング 02:01 車載システム/ソフトウェア開発プロセス関連の規格08:12 規格対応例11:29 見受けられる規格対応の課題 13:43 規格対応プロセスの統合14:36 統合のロジック(ISO 26262 とISO 21434の統合/量産設計プロセスへの組み込み)17:12 統合プロセスの例(システム要求分析/ソフトウェア要求分析/ソフトウェアアーキテクチャ設計/品質保証)30:05 ISO 26262・ISO/SAE21434導入ガイドラインのご紹介41:26 Q&A