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Automotive SPICE 4.0 トレーサビリティと一貫性に関する変更点(SYS/SWE/VAL)

Automotive SPICE 4.0 に関するコラム、過去のコラムで諸々の変更点を解説してきましたが、今回はエンジニアリング系プロセス全般(SYS、SWE、VAL)のトレーサビリティと一貫性に関する括りで整理してみました。また、関連するこれまでのコラム解説へのリンクも掲載していますので、合わせてご確認ください。

◆妥当性確認プロセス 一貫性の確保及び双方向トレーサビリティの確立:VAL.1
v4.0で新たに追加されたVAL.1(妥当性確認)プロセスにより、これまで水平方向のトレーサビリティがなかったSYS.1(要求抽出)に対しても、妥当性確認手段との一貫性の確保と双方向トレーサビリティの確立が求められるようになりました。これにより、SYS.1に対応した評価が必要となり、プロジェクト全体のトレーサビリティが強化されました。
v4.0でVAL.1(妥当性確認)プロセスが追加された背景の考察は、以下のコラムを参照してください。
「Automotive 4.0のVAL.1プロセス:検証との違いとその重要性」(2024.09.20)

トレーサビリティ図 ・v3.1とv4.0の差分_VAL.1:

◆ソフトウェア要件とソフトウェアユニット間のトレーサビリティの廃止:SWE.3
v3.1では、ソフトウェア要件とソフトウェアユニット間のトレーサビリティの確立の要求が存在していましたが、v4.0では、この記述が削除され、ソフトウェア要求とソフトウェア詳細設計の間のトレーサビリティの確立に変更になりました。「ソフトウェアユニット」とは、実装レベルの用語ではなく、論理的モデリングレベルの用語であり、ソフトウェア要件とのトレーサビリティとは何を意味するかが、わかりにくかった問題を解消しています。
この変更の詳細に関しては、以下のコラムを参照してください。
「ソフトウェア要件とソフトウェアユニット間のトレーサビリティの廃止」(2024.04.09)

トレーサビリティ図・v3.1とv4.0の差分_SWE.3:

◆ソフトウェア詳細設計とソフトウェアコンポーネント/統合検証手段の間のトレーサビリティの追加:SWE.5
v4.0のSWE.5 BP6で、SWE.5の検証手段とSWE.3のソフトウェア詳細設計の静的および動的な側面との間の一貫性を確保し、双方向トレーサビリティを確立する要求が追加となっています。
なお、SWE.5の検証手段、またSWE.2、SWE.3のソフトウェア設計工程の作業の詳細に関しては、それぞれ以下のコラムで解説しています。
「Automotive SPICE 4.0 SWE.5 ソフトウェア統合テストの考え方」(2024.06.13)

「ソフトウェアエレメント、ソフトウェアコンポーネント、ソフトウエアユニットの関係について」(2024.07.19)

トレーサビリティ図・v3.1とv4.0の差分_SWE.5:

トレーサビリティの対象外となる事例:SYS.2/3,SWE.1/2
v4.0のSYS2 BP5の 備考8では、例えば「XXXプロセス標準への準拠」というプロセス要求のような利害関係者の非機能要求については、システム要求からはトレースできないが、検証の対象であるとしています。つまり、トレーサビリティは対象外ですが、例えば「監査報告書」によって、証拠付けされる必要があります。

Automotive SPICE v4.0 SYS.2から引用:

以下はSWE.1の例ですが、このほかにSYS.3、SWE.2にも、同じような備考が追加されていますので、ご確認ください。

Automotive SPICE v4.0 SWE.1から引用:

非機能要求でも、その内容によっては、トレーサビリティの対象なる場有もあります。以下のコラムで解説しています。
「Automotive SPICE 4.0における非機能要件の考え方」(2024.01.30)

 

◆「検証手段」と「検証結果」の双方向トレーサビリティの確立:SYS.4~5,SWE.4~6
v3.1のテスト系プロセスで要求されていた「テストケース」と「テスト結果」の間の双方向トレーサビリティの確立は、v4.0では「検証手段」と「検証結果」という用語に変更されています。単に用語の変更だけで、トレーサビリティの図的には差分はありません。
用語が変更された背景などに関しては、以下のコラムを参照してください。
「『テスト』から『検証』へ - Automotive SPICE 4.0の『検証』プロセス -」(2024.06.19)

 

◆双方向トレーサビリティと一貫性の概念の再統合:SYS.2~5、SWE1~6
v3.1ではトレーサビリティと一貫性の要求は、2つBPに分離されていましたが、v4.0では1つのBPに再統合されました。具体的には、v3.0で1つのBPから2つのBPに分離されたものが、v4.0で再度1つのBPに統合されただけであり、トレーサビリティの図的には差分はありません。この変更により、トレーサビリティと一貫性の管理がよりシンプルかつ効率的になりました。

最後に、Automotive SPICE 4.0のエンジニアリング系プロセスの一貫性とトレーサビリティの図を引用しておきます。

佐藤 崇