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Automotive SPICE SYS.1 設計レベルの顧客要求がある時のシステム要求の作り方

今回はAutomotive SPICEの要求事項を満足するためのヒントとして、顧客要求の取り扱いについて説明いたします。

特に自動車開発の場合、顧客の要求仕様に書かれている内容が、明らかにシステム要求レベルのものではなく、ソフトウェア要求(SWE.1)やハードウェア要求(HWE.1)レベルになっている場合や、設計上の制約(SWE.3:設計レベルの記述)となるレベルまで踏み込んで書かれているケースが多く見受けられます。このような詳細なレベルの要求の取り扱いに悩んでいませんか?

 

具体的な悩みとしては:

  • 詳細な顧客要求を、システム要求仕様書(SYS.2)に、どのように落とし込めば良いのか?
  • システム要求仕様書にソフトウェア要求やソフトウェア設計上の制約に相当するのものを記載した場合、ソフトウェア要求や設計書には、どのように記述すれば良いのか?(同じ文書を複数の文書にコピーするのか?)
  • 顧客要求からシステム要求、ソフトウェア要求へのトレーサビリティは、どのように取るのか?

 

顧客要求が設計上の自由度が無いような詳細レベルの場合、システム要求仕様書にソフトウェア要求レベルや設計制約レベルの顧客要求を記述する必要はありません。

顧客要求から、(システム要求をスキップして)ダイレクトにソフトウェア要求に組み込む、あるいは設計へのトレーサビリティを取れば良いのです。全ての顧客要求をシステム要求に組み込み、さらに同じ内容を後続の要求(例:ソフトウェア要求)にコピーするような無駄な作業をする必要はないのです。

 

ただし、1つだけ注意点があります。
このように、システム要求をスキップして詳細レベルの書類に落とし込む場合、その要求や制約が、皆さんが開発するシステム要求やアーキテクチャレベルに影響がないことを評価した上で、判断することが重要です。

詳細レベルの要求や設計制約と思える要求は、顧客の立場から主張する必要があるものであり、皆さんのシステム設計にはフィットしない場合もあるからです。その場合は、顧客と相談の上、詳細レベルの要求や設計制約を変更してもらう必要があります。

 

このような困りごとが多いことは、VDAも認識しているようで Automotive SPICE ガイドライン 改訂第2版のSYS.1に説明が記載されていますので参考にしてください。

 

Automotive SPICEを使っていると、「この作業無駄だなぁ」とか「非効率だ!」と思いながらも、Automotive SPICEの認証を受けるためには、仕方なく実施しているケースを数多く見ます。
もし、「無駄」だと思った場合、あなたの感覚は正しく、それは無駄な作業なのだと思います。もう1歩踏み込んでAutomotive SPICEで記載している事項の本質的を考えてみることをお勧めします。きっと違う実装方法があるはずです。

 

とは言え、なかなか判断が難しいですよね。そのような時は、弊社までお問合せください。微力ながら皆様のお力になれることを願っています。

 

日吉 昭彦