アセスメントを活かす!改善を定着させる4つのポイント
皆様の中には、Automotive SPICEなどのモデルに基づいたアセスメントをした、もしくは受審した経験のある方が多くいらっしゃるかと思います。では、そもそも何のためにアセスメントをするのでしょうか?レベル獲得をアピールするためでしょうか?商権獲得の条件になっているからでしょうか?確かにそういった事情もありますが、その事情に固執しすぎるとその一瞬のためだけにプロセスを整備する、いわば一過性の取り組みになってしまう場合があります。そこで今回は、アセスメントの本来の目的とアセスメントの有効な活用事例についてご紹介したいと思いますので、ご一読ください。
■ アセスメントの本来の目的とは?
Automotive SPICEやCMMI等のモデルに基づくアセスメントは、プロジェクトの現状を客観的に可視化し、次の改善につなげるための有効的な手段です。しかし、現場ではアセスメントが“イベント化”してしまい、評定や弱点ばかりに注目される傾向が見受けられます。その結果、アセスメントが一過性の取り組みとなってしまい、継続的な改善につながらないケースが多くなっています。
皆様の現場では、アセスメントが継続的な改善に活用されていますでしょうか?様々な組織でお話を伺う中で、特に国内では”アセスメントのイベント化”の傾向が強いように感じています。
■ 目標達成がゴールになってしまう落とし穴
アセスメントの目的が「能力レベルの獲得」にすり替わると、達成した時点で改善活動が止まってしまいます。このような状況下ではプロセスの更新が行われず、最悪の場合、改善前の状態に戻ってしまうこともあります。
数年前のことになりますが、私が過去にプロセス改善を支援した開発現場へ何年かぶりに訪れた際、そこで見たものは、以前定義したはずのプロセスが改善前の状態に戻っており、時間をかけて築いてきたプロセス資産や知見の多くが失われていた姿でした。その時は大きな虚無感と同時に、あるべき姿を”維持”できなければ意味がない、と感じた瞬間でもありました。
そういった意味でも、アセスメントという、いわば「プロセス診断」を継続的に実施し、常に改善を前に進める取り組みが必要だと改めて感じています。
■ アセスメントによる改善を定着させる4つのポイント
ここからは、アセスメントによる改善の機会を自組織に根付かせるための4つのポイントをご紹介します:
① まずは小さく始めてみる
- 10数プロセスを一度のアセスメントで実施する必要はありません。
- 主要なプロセスや、その中の一部のベースプラクティス(BP)に絞って実施し、小刻みに改善を繰り返す方法も効果があります。
② 現場と一体で進める
- 開発・QA・マネジメント層が一体となって推進することで、組織全体の意識を高めることができます。
- 改善活動の体制を構築する際には、影響力のある人材の選任が重要です。
③ 質の高いフィードバック
- アセスメントによって問題の本質となる指摘・弱みを抽出することで、改善の方向性を明確にすることができます。
- よってアセッサーは、関係者全員が改善の方向性に納得できるよう、根拠のあるフィードバックをする必要があります。
④ 成果の可視化
- コスト削減、納期短縮、品質向上など、改善によって得られた成果をプロジェクトや管理者層が実感できるようにします。
- 成果の大小にかかわらず、改善結果を共有することが重要です。
このような取り組みを通じて、アセスメントは組織にとっての“生活必需品”となり、日常的な改善活動の一部として定着していきます。
■ 私たちが支援できること
改善が停滞する主な原因として、以下の2点が挙げられます。
- 改善の目的が「レベル獲得」へとすり替わってしまうこと
- 現場にとって改善の効果が実感しづらいこと
こうした状況を打開するためには、まず「アセスメント」という手法を活用し、問題の本質を客観的に可視化することが重要です。質の高いアセスメントは、課題の核心を捉え、改善の方向性を明確にする力を持っています。
さらに、アセスメントを一部の専門家だけの取り組みに留めるのではなく、開発・QA・マネジメント層が一体となって継続的に推進することで、その効果を最大限に引き出すことができます。
私たちは、以下のような支援を通じて、高品質なアセスメントの定着と改善活動の加速に向けたサポートをしています:
- 組織にメリットのあるアセスメントが提供できる、社内アセッサーの育成
- アセスメントとプロジェクトが共存・共栄する仕組みづくり
- SEPG(Software Engineering Process Group)と連携したプロセス改善支援
アセスメントでプロセスを最速改善したい、改善を組織に根付かせたい、という思いのある方は、ぜひ弊社コンサルタントへお気軽にご相談ください。
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(長澤 克仁)